【南山小学校 西脇校長先生】
まずは、この春に新聞に掲載された六年生の詩をご紹介します。
「つぼみ 春になって 僕たちは最高学年になる 六年生という責任をもち 五年生までの学びと経験を生かしていきたい そして やさしさと気づかう心で すばらしい六年生になりたい 六年生で自分という花のつぼみを 精一杯ふくらませ 大人になって 大輪の花を咲かせたい」
大人は早く花を咲かせようとして、つぼみをこじ開けようとしてしまうことがありますが、小学校での学びは花に例えればつぼみの期間にあたり、咲くための準備をするためのものだと、大人に教えてくれる詩だと思います。
南山学園の共通の教育目標は「人間の尊厳のために」というものです。南山小学校では、子どもたちにも分かりやすく「かけがえのないあなたと私のために」と言い換えられていますが、尊厳とは、キリスト教の世界観に基づけば、あらゆる人間に刻印された神聖性であると言うことができます。かけがえのない我が子だけではなく、どの子も神様から授かった子であり、同じ存在なのであるという視点を持つことで、開かれた心を持って接することができるようになります。この人間の尊厳という視点を持って生きていける人を育てていくことが教育目標でありますが、これを実現するには小学校だけの力ではなく、家庭との連携が必要となります。
このような教育目標を持つに至った、本校の歩みについてもご説明させていただきます。1932年に設立された、今の男子部にあたる南山中学校の教育が評判を呼び、1936年に南山小学校も設立されました。1941年には戦争の影響を受け、名古屋市に移管される形で廃止されていますが、当時の南山小学校の入学案内を見ますと「児童中心の教育」という理念が掲げられています。この「児童中心の教育」というものは、当時の教育改革の中で新しい教育として始まったものでしたが、南山小学校ではこの「新」の文字を「真」として「真教育」と呼称していました。教え込む教育ではなく、学ばせる教育を通して生徒の隠れた能力を呼び覚ますことを目指すということが、戦前から行われていて、2008年に南山大学附属小学校として復活して以来、現在にも引き継がれています。
続いて、南山小学校の教育の特徴を具体的に五つご説明します。まず一つ目に、「教え込みではなく考えさせる教育」です。論理的・合理的に考えていく道筋を学ばせ、時には回り道をすることも楽しめるように指導します。二つ目には「自分を見つめ、表現する機会を設定すること」です。日々のお祈りや、年に一度の静修は、自分自身を見つめる大切な素地となっています。また自分づくりファイルに自分の記録を残すことで、自分を改めて振り返ることもできるようになっています。三つ目は「こつこつと積み上げる日々の学習」です。毎日プリントに取り組むがんばりタイムや、各教科の単元ごとにこまめに内容を確認するための単元テストで学力の基盤を築いています。こちらも毎日の取り組みである自学ノートは、自主的な学習であると同時に、各自が興味のある内容を自由に学ぶものでもあります。四つ目には「主要教科以外も手を抜かない教育」です。いわゆる主要教科以外の体育も家庭科も音楽も、人間形成の上で大切な学びですし、すべての科目が中学校への推薦基準となっています。委員会活動やクラブ活動、異学年交流も人としての根であり礎です。五つ目は「家庭との教育連携」です。南山小学校が目指す教育を実現するためには、学校と保護者の皆様が上下関係なく、分け隔てなく連携していくことが必要です。
また、資料としても公開しております卒業生の進学先をご覧いただいても分かる通り、卒業生が希望する道を自分で選ぶことを学校としては応援しております。南山中学校への進学をご希望される方が多いかとは思いますが、生徒の囲い込みを行うようなことはありません。
では、どのようなご家庭、お子様に入学をしていただきたいかという方針であるアドミッションポリシーをご紹介します。南山小学校が求める保護者像は、「子どもの教育のために学習面・生活面で小学校と連携できる方」、「子どもを育てていくなかで自らも成長していこうとする姿勢をお持ちの方」、「保護者同士の関係を良好にすすめることができる方」です。また、求める幼児像は「手を合わせて祈ることを大切にできる子」、「何事にも意欲的に取り組むことができる子」、「友だちに優しくできる子」です。家庭教育はすべての教育の出発点ですので、家族同士での挨拶、会話、言葉遣いやお手伝い、全ての生活習慣の中で子どもの認知発達を伸ばしていただければと思います。
小学校は、幹を養ったり大輪の花を咲かせたりするための機関ではありません。つぼみを大事に育てるための機関です。教育界の国宝と呼ばれた東井義雄氏の言葉に「根を養えば樹はおのずから育つ」とあるように、背伸びすることなくゆっくりと育むことが大切なのです。南山小学校では、子どもがつぼみを膨らませるための根っこを、学校と家庭が連携して育てていきたいと考えております。
【南山中学校女子部 長瀬副校長先生】
まだお子さまが赤ん坊のころ、泣き止まない時にかけた言葉は何でしたでしょうか。おそらく「よしよし」かと思いますが、これは南山学園の理念に通じるところがあります。自分では何もできない赤ん坊は泣くことしかできませんが、無条件に「よしよし」と言い、良い子であると認めてあげるのです。「人間の尊厳のために」という学園全体の理念の通り、南山女子部は勉強だけではないということを、お伝えしていきたいと思います。
南山女子部の教育は、キリスト教精神による教育、六カ年一貫教育、国際的視野の育成を三本柱としております。
キリスト教的な人格教育を重視していることは、初代校長であるライネルス校長の「賢い人になるより善い人間に」という言葉にも表れています。具体的な内容として中学一年時には、一泊二日のオリエンテーションを通して、南山生としての自覚を持ってもらうとともに、自分を見つめる機会を設けています。中学二年時には、二泊三日の静修会を行います。普段は禁止されていない携帯電話、スマートフォンもこの三日間は持たず、神父様のお話を聞いたり、グループ活動を通じたりして自他を見つめます。中学三年時には、平和学習、宗教教育の二つを兼ねて長崎へ修学旅行に行きます。高校二年時には、修学旅行で沖縄へ行き、平和学習を行います。実際に沖縄へ行くのは三月ですが、それまでに各自が設定したテーマで事前学習も一年間行います。
続いて六カ年一貫教育についてです。ゆとり教育と言われた時代も、旧課程の内容、レベルをずっと維持してきました。数学では六カ年一貫の体系数学を用いていますし、理科では中一で生物、中二で化学、中三で物理・地学を、一部は高校範囲も含めながら進めます。高一ではゆくゆく医学部受験にも対応できるように、物理基礎・化学基礎・生物基礎の全てを学習するため大変ではありますが、中学生の間に高校範囲も少しずつ扱っておりますので、少し楽になるのは中高一貫の利点です。社会では中一で地理、中二で歴史、中三で公民を扱い、英語に関しては英会話の授業も週二時間あります。
中学校のうちはテストの順位を出しておりませんが、通知表や度数分布表は出しておりますので、ある程度は分かるかと思います。日頃から小テストやノートチェックは多くあることに加えて、一学年が40人5クラスだけですので、担当教員は生徒の状況を細かく把握することができますし、学年内で全クラスが同じ授業を受けられるというメリットもあります。なお、文理分けは高二で行われる学校が多いのですが、南山女子部では高三まで文理分けせず、バランスよく学習します。昔は完全に文系の方が多かったのですが、2000年ごろからは理系の方が多くなり、近年は200人のうち120人から130人が理系を選択しています。
進路指導としては、高校一年時に京都へ行って、京都大学、同志社大学、立命館大学を訪れ、先輩の話を聞き、進路を考えるきっかけを作ります。同じく高校一年時には南山大学の授業を実際に体験してもらう機会もありますし、卒業生、企業と連携した講座なども実施しています。他にも『進路の手引き』という冊子も配布しておりますが、生徒へのアンケートの結果では85%の生徒が役に立ったと回答してくれています。2019年度の進学実績を見ると、国公立大学には103名が合格し、そのうちの34名が医学部に合格しています。私立では定員の厳格化が行われている中ですが、早稲田に33名、慶應に19名が合格するなど、頑張ってくれています。
国際的視野の育成に関しては、夏休み中の海外研修として、イギリスの女子校の寄宿舎に入りながら授業を受けるコースに加え、2019年度からはカンボジア・ベトナムコースも新設され、JICAや現地学生との触れ合いを通じて国際経験を積む機会となっています。また冬休みにはイタリアでクリスマスミサに参加するコースもあります。
私は数学の担当ですので、ここで数学の話もさせていただきます。小学校では0÷1=0と学びますが、中学校で1÷0は考えないことになっています。0を割ることはできるのに、0で割ることができないのはなぜなのか、これを南山女子部では高校数学で習う背理法を用いて考えていきます。また2016年には、私が担当していた高校二年生の授業で、大学入試の問題をもとにした問題を出題しました。実はこの問題は、南山中学男子部の入試に実際に出題された問題の解き方を使っても解くことができます。これらのことから分かるように、小学校での学びは大学入試まで密接につながっていますし、中学入試レベルの学びも非常に大切な力です。
こうした学びの姿勢と知識を習得することはもちろん、勉強だけではなく「人間の尊厳のために」という南山学園の建学の精神も身に着けてもらえるよう、さまざまな活動や行事も実施しながら、南山女子部の教育は行われています。
【南山中学校男子部 岡野教頭先生】
まず体育祭の様子をご覧いただきたいのですが、二人三脚での一幕です。他の走者がすべてゴールしてしまって、大差をつけられながらも一生懸命走っている三年生の二人の周りに、他の三年生たち皆が集まって、応援しながら一緒に走っているという場面です。三年間一緒に過ごしてきた仲間ですから、勝ち負けを超えたつながりが生まれているのです。
こうしたところからも見て取れるように南山男子部というのは、素直な気持ちと優しさを持ち、それを実際に行動に移すことができる生徒が育つ学校です。学んだ力を人のため、社会のために役立てたいと考えた時に、それを実行に移すことができるのは、やはり素直な心が育む心の教育がしっかり行われているからだと思います。
南山男子部の教育は、よく三輪車にたとえて説明されます。推進力を生む後輪にあたるのは学習指導と国際性です。国際性については、そもそも昭和7年に旧制南山中学が設置されたとき以来、カトリック修道会のつくった学校として国際性教育が一貫して行われています。
そして進む方向を決める前輪こそが心の教育です。南山男子部では心の教育を重視していますので、生徒たちが真っ直ぐ歩んでいくことができます。宗教教育は心の持ち方、人間の生き方を考えるためのもので、決してクリスチャンになりなさいというわけではありません。クリスチャンのご家庭の生徒は、全体の1%か2%くらいで、これは日本全体の平均と同じくらいです。お寺や神社のお子様もよくお通いいただいていますが、これは宗教を通じて行っている心の教育を評価していただけているということの表れではないかと考えています。
また、一学年あたりわずか200人で、高校募集のない完全中高一貫となっているため、生徒同士のつながりも強くなります。さらに一学年は五クラスだけですので、科目が同じでもクラスによって担当する先生が違うということもありません。これによって教員は学年全員の様子を把握することができますし、生徒の立場から見れば、担当教員全員が自分をしっかり見てくれているということにもなります。こうした生徒同士の絆、生徒と教員の一体感を、我々はよく「南山ファミリー」と呼んでいます。
生徒と教員の間にもこうした一体感があるうえに、素直な心を持った生徒たちですので、勉強の進め方に関しても先生に言われた方法をしっかり守ってくれます。そうすると、成績の向上にもつながりやすいのです。よく、「南山男子部は心の教育と進学指導が両立した学校だ」とお褒めの言葉をいただくことがありますが、成績指導・進学実績を支えているのは素直な心ですので、やはり全ての根本は心の教育にあるのです。
その進路指導についてですが、私たちは、有名大学に進学することが学びのゴールであるとは決して考えておりません。南山大学の建学の精神を表す言葉に「地の塩、世の光たれ」というものがあります。要するに、それぞれが持つ力を世のために使うことができる人間を目指すということです。それに向けて六年間かけて自分の将来を考えるため、中学二年時には自ら体験先を決めるところから始める職業体験を行い、中学三年時には福祉体験を行って自分の力を人のために使うことを実感します。高校生になると、卒業生から話を聞く機会を通じて自分の将来を考えていきます。高校二年生からは大学の授業を実際に受けてもらい、大学で自分は何を学びたいのかということを真剣に考えることになります。
最新の大学進学の実績としては、国公立大学に60名、うち理系43名で、医学部には22名、うち国公立には10名となっています。一学年200人という人数なので、割合としては高いのではないでしょうか。学校説明の資料でも公開しておりますが、学校内の実力テストの順位と合格大学の関係をまとめた表をご覧いただくと、極端な偏りがあるわけではなく、皆が頑張っていることも分かるかと思います。なお、高校二年時に文系・理系クラス分けが行われると、理系の方が多くなりますので、文系学部の多い南山大学への推薦制度で進学する生徒はそれほど多くありません。
将来進路を選ぶための力の基礎を中学生のうちから固めていくために、定期テストの結果に応じて、補充授業の実施もしております。また、完全中高一貫校であることを活かして、六カ年計画でカリキュラムが組まれていますので、無理なく効率的に先取り学習もできますし、より深めていくこともできます。
大学入試改革も行われ、表現する力、考える力が求められるようになりますが、どれも南山男子部ではずっと取り組んできている内容です。中学一年から独自科目の表現、高校での探求ゼミを行っておりますし、英語の四技能に関しても英検・GTECを導入していますので、ご安心いただければと思います。また、中学三年時には数学と英語でアチーブメントテストというものが実施されます。このテストは毎年同じ問題なので、毎年の結果と比較して得意・不得意を分析することができます。
校舎も新しくなりICT環境が充実し、四分野対応の理科室など、理系に強い環境も更に整いました。部活動も活発に行われていますので、同じ目標に向かって努力した仲間を得ることもできます。こうした素晴らしい環境の中で充実した心の教育が行われ、また目的意識も明確に持つことができるので、学びに真っ直ぐ向かっていくことができるのが、南山男子部なのです。