【南山大学附属小学校 西脇校長先生】
南山小学校の教育理念は「人間の尊厳のために――かけがえのないあなたと私のために」というものです。
私は、南山の教育とは、これしかない、これに尽きると思っております。
ここでいう「尊厳」とは、相手を尊重する、人権を大切にするといったこと以上の、あらゆる人間に刻印された神聖性、キリスト教世界観に基づいたものであります。この世の中のものはすべて良いものです。私たちだけではなく、あなたも良いものです。かけがえのないわが子と同じように、あの子もまたわが子と同じくかけがえのない存在なのです。とはいうものの、他人を自分と同じように考えようとするのはなかなか難しいことです。たとえひどいことをされたとしても、その人も私と同じように大切なかけがえのない存在であると考えることができる人、そうした人間の尊厳の推進者となる人を一人でも多く世の中に送り出したいと考えております。
南山小学校は、ヨゼフ=ライネルス神父によって1936年に創立され、当時の情勢から一時廃止となりましたが、その志は現在の南山小学校にも受け継がれています。「どの児童にも隠れた宝玉のような独創性や眠った能力が潜んでいます。この児童一人一人の独創性を見つけ能力を呼び醒まし、それに基づく彼らの自発的な活動を中心として、新しいものの発見、未知の世界への探求へと導くような教育をいたします。教え込む教育ではなくて学ばせる教育、児童自ら観察し、実験し、比較し、思考して、自ら帰結に達し、原理を発見するように仕向ける教育なのであります。」と、旧南山小学校の案内にも明記されています。そしてこの志は、まさに今文科省が提示している「生きる力を育む教育改革」に通じるものであります。
さてここで南山小学校の高学年の掲示物、作品をご紹介いたしましょう。
まず、4年生。「南山小の朝をつくろう」という掲示です。朝は非常に大事です。挨拶をしっかりとし、きびきびと身のまわりを整え、良いスタートを切りたいものです。お友達は「~くん」「~さん」をつけて呼びましょう。ここには相手を大切にする心が見えます。ロッカーは自分に与えられた世界です。そこをきちんと整理整頓する――混沌とした状態から秩序だった状態へ、カオスからコスモスへと自分で変えていく、この力こそが将来世界を変える力につながっていくわけです。また丁寧な学習、「自分の知りたい」を大切にする学習を、という考えのもと「自学ノート」を実践し、みな楽しく取り組んでいます。
5年生は「私の好きな春をつくってみました」の作品を紹介します。清少納言の枕草子「春はあけぼの」をテーマとして、みな素晴らしい作品をつくってくれました。微妙な季節感を的確にとらえたもの、日常のひとこま、淡い恋心を綴ったものなど、それぞれの感性豊かな表現に驚きました。
6年生は、「線対称」「点対称」について、算数という教科の枠をこえ、切り紙で芸術的な作品を掲示しています。係活動の掲示にもクラスとしての成長が見られます。その掲示には遊び心があり、それこそが学習の原点であると感じます。ここでペアランチを経験した6年生の短歌をいくつか紹介いたします。
「とびらから1年生が入ってく これから始まる初めてのランチ」「1年生ランチを目にしたその顔は 心配しているぼくと同じだ」「ペアランチ すみれのような静けさは 心の中にはずかしさあり」「1年生 自分の口からありがとう 自然と私もどういたしまして」 1年生と6年生が向かい合って食事をする様子を見ていると、食事の大切さ、温かな命、「心を育む教育」の大切さを感じます。 「根を養えば樹は自ら育つ」という言葉があります。中学校に行き、そしてその先さらに成長するための根を育てるのが小学校時代。南山小学校では、学校と家庭とがしっかりと連携をとり、強く豊かな根を育てていきたいと考えております。
【南山学園 南山高等・中学校女子部 長瀬副校長先生】
南山中学校はライネルス校長によって神学教育の場として設立された学校であり、けっして進学校であることを目的にしているわけではありません。毎週一時間は宗教の時間があり、月曜日には、朝礼で神父の講話を聴きます。また毎日朝礼で聖歌を歌い、朝夕お祈りをします。入学式は入学感謝ミサであり、クリスマス聖式、卒業感謝ミサ、クリスマス修養会と、カトリック精神に基づいた学校教育を行っております。南山中学校女子部は、中高一貫校として、人間形成にとって一番大切な時を分けることがありません。行事、生徒会、部活動、課外活動と中高一緒に取り組みます。校舎・教室も二階が中1と高3、三階が中2と高2、四階が中3と高1という形になっています。
南山中学校女子部は「勉強ばかりではない!」それをスライドとともに見ていただきたいと思います。
中1は、豊橋・浜松に校外学習に 行きます。カトリック精神を基盤に南山生としての自覚を持ち、自分を見つめるのがねらいです。また中田島砂丘に行き、ウミガメの産卵を見て、様々な話を聞くことで環境問題への関心も高めます。最後には、砂丘のゴミ拾いをして帰ってきます。中2は、2泊3日で修養会と称して大津に出かけます。我が校はスマホや携帯電話について普段は禁止してはいませんが、この期間は一切禁止、テレビも見ない生活の中、キリスト教的なリーダーシップを養い、自他を見つめます。中3は、2泊3日で長崎に研修旅行に行きます。
中高一貫教育の欠点は、いわゆる中だるみです。高1では、オリエンテーション合宿として1泊2日で京都に行きます。そこで「中学4年生」ではない、「高校1年生である」という自覚を持てるようにします。初日は京都大学を、2日目には同志社大学、立命館大学を訪れ、先輩からの話を聞いて進路を考えるきっかけとします。
高2では、4泊5日で沖縄に行きます。平和教育、そして人生という教科を考える機会です。
高3は受験学年なので、宿泊で出かけることはありませんが「イチゴ狩り」「バーベキュー」を実施、生徒たちはとても楽しんでいます。その他、夏休み期間のイギリスホームステイ・ホームカレッジ、冬休みのイタリア研修などの海外研修、北アルプス登山、百人一首・英語暗唱・漢字・合唱などの大会やコンクール、京都大学とコラボした理科企画をはじめとした教科企画授業など、充実した学校生活を送っています。
アンケートでも、学校が毎日楽しいと答えた生徒が98%、自主性を重んじる学校であると答えた生徒が88%、勉強をやらされていると感じると答えた生徒は25%といった結果が出ています。学校祭は、9月の第一週の土日に行われますので、是非お越しください。部活動もさかんで、世界大会レベルの生徒もいます。キャリア教育に関しても、先輩からの体験談、企業と連携した講座等、生徒にとって役に立つ情報を提供しています。最近は工学系の人気が高まっている傾向にあります。
南山中学校女子部では、カリキュラムに沿って、6年間でじっくりと学習をします。いわゆる「ゆとり」と呼ばれた時代も、南山中学校女子部では旧過程で学習を進めました。数学は、6年間「体系数学」を用いて学びます。理科は、中1で生物、中2で化学、中3で物理・地学を、高1では、物理・化学・生物の基礎全てを学習して、医学部受験に対応できるようにします。社会は中1で地理、中2で歴史、中3で公民、英語は「NEW TREASURE」を用いて学習、週2時間は英会話の授業があります。
中学では、いわゆる順位は出しません。テストごとの度数分布と通知表を参考にしていただければおおよその位置はわかるかと思います。小テスト、ノートチェックなどのきめ細かな学習指導、学習が遅れ気味の生徒には補充授業を実施します。進路を文系と理系とに分けるのは、高3の時です。早く進路を分けるのではなく、各教科をバランスよくまんべんなく学習することこそ、我が校の国公立大学への合格実績につながっていると考えます。昔は文系が強い学校でしたが、ここ最近の理系:文系の比は120:80、年度によっては130:70と、南女はリケジョの学校となっております。進学実績としては、みなとてもよく頑張ってくれています。学校内順位が120番前後の生徒でも医学部医学科、150番前後の生徒も国公立大学に合格しています。また早慶はじめ60校ほどの大学に指定校推薦の制度があります。
さて、私は数学の教師をしておりますので、ここで少し数学の話をしたいと思います。中学入試の際に算数で学んだことは、大学入試の数学にも使えます。前に示したのは、中学入試における「単位分数」についての問題ですが、この解き方で大学入試の数学の問題も解くことができます。また、東京大学では「正八面体のひとつの面を下にして水平な台の上に置いたとき、この八面体を真上から見た図(平面図)を描け」という問題が出題されました。空間図形は女の子が苦手としがちな分野です。中1の方程式の問題でも、小学校では0÷1=0、0÷2=0…と習ったのに、中学校では1÷0を考えないのはなぜか、1÷1=1、2÷2=1…と習ったのに、中学校では0÷0は考えないのはなぜか、などの問題を背理法で解いていきます。
このような問題に対して柔軟な考えで対応できるか否かは、小学生の時の学びとつながっています。大学入試まで使える学びの姿勢と知識を小学生のうちにしっかりとつけていただきたいと思います。
【南山学園 南山高等・中学校男子部 澤田副校長先生】
南山男子部は、「一点から一点への最長距離を教える学校」だと私は考えています。受験のテクニックや、目先の偏差値だけを上げる方法を教えるのではなく、迷うことも悩むことも経験して、紆余曲折の中で最長距離を如何に意味深く生きるかを感じてもらうのです。
2020年に迫った大学入試改革によってセンター試験は廃止され記述式の問題になりますし、英語教育・国際的視野の育成ということもますます重要視されています。既に男子部では国語表現や、社会探求ゼミでのプレゼン実施・レポート作成によって記述式問題に対応できる力を伸ばしていますし、英語についても英検やGTECを全員が受験しています。
地理歴史についても、新指導要領では日本と世界の近現代史を総合的に学ぶ歴史総合という科目が新設されます。こちらについても、既に男子部では中1から「世界」という科目があり、歴史だけでなく地理・経済を学び、各地域や国について総合的に学ぶことできます。
中2になると「日本」という科目で日本史についても学びますが、同様に地理や経済も学びます。
そして中3の時点では高校の日本史の範囲に進むことができる点はまさに中高一貫校であることのメリットです。また、中3で実施される英語・数学のアチーブメントテストでは、毎年同じ問題が出題されています。これによって、毎年の基準に対して個々の弱点を正確に把握することができます。
新校舎はICT環境が充実しており、電子黒板、タブレット端末も整備されていますし、教室も物理・化学・生物・地学にそれぞれ理科教室がありますので、理系に強い環境も整っています。2018年度は国公立大学に78名が合格しましたが、そのうち68名が理系の大学・学部に進んでおります。
なお、南山高校男子部から南山大学への進学がどうなっているかというと、基本的に男子部から推薦されれば進学することができます。しかし、近年では推薦での進学を希望する生徒数は年に20名前後となっていて、外部の大学を受験して結果を出す生徒が多くなっています。
南山男子部が目指すものは三輪車で例えられます。後輪がどれだけ力強く回っても、前輪の角度が少しでもずれていては真っ直ぐ進むことができません。この後輪に当たるものは学習指導・進路指導と、国際性・国際的視野、そして前輪に当たるものがキリスト教精神に基づいた心の教育です。
学校行事として中1で市内探訪、中2で職業体験、中3で福祉体験を行って興味関心を育み、高1では京都大学へのオリエンテーション、高2では各大学と連携しての総合講座を行って、進路選択も主体的に進められるようにします。このことは、各大学への合格者数にも表れていて、学部学科の合格者延べ数と、合格人数の実数がほとんど同じ数字になっています。学びたい学問、学部学科まで見極めた進路選択ができているということです。
勉学以外での生徒の活動も盛んで、将棋部やアメリカンフットボール部など部活動も盛んですし、男子校としては唯一合唱コンクールが開催されています。
自分自身が他人の役に立った経験を具体的に記述させるという入学試験の国語の問題にもよく反映されていますが、「賢いだけでなく、人の痛みが分かる心優しい人間になること」というライネルス神父の言葉こそが南山男子部で学ぶ目的なのです。